リスクの見積もり方法
リスクの見積もりは、どのように行えばよいのですか。
見積もり方法には、次の(1)マトリックスを用いた方法や(2)数値化による加算法などがあります。
(1)マトリックスを用いた方法
「負傷又は疾病の重篤度」と「発生可能性の度合」をそれぞれ横軸と縦軸とした表(行列:マトリクス)に、あらかじめ重篤度と可能性の度合に応じたリスクの程度を割り付けておき、見積対象となる負傷又は疾病の重篤度に該当する列を選び、次に発生可能性の度合に該当する行を選ぶことにより、リスクを見積もる方法です。
<見積もり例>
① 「負傷又は疾病の重篤度」と「発生可能性の度合」をそれぞれ横軸と縦軸とした次のような表に、あらかじめ重篤度と可能性の度合に応じたリスクの程度を割り付けておきます。
(表1)
| 負傷又は疾病の重篤度 | |||||
| 致命的 | 重大 | 中程度 | 軽度 | ||
| 負傷又は疾病の発生可能性の度合い | 極めて高い | 5 | 5 | 4 | 3 |
| 比較的高い | 5 | 4 | 3 | 2 | |
| 可能性あり | 4 | 3 | 2 | 1 | |
| ほとんどない | 4 | 3 | 1 | 1 | |
② 次のような表に、あらかじめ対策を講ずべき優先度とその対策を講ずるまでのことを決めておきます。
(表2)
| 優先度 | ||
| 5〜4 | 高 | ・直ちにリスク低減措置を講ずる必要あり ・措置を講ずるまで作業停止 ・十分な経営資源を投入する必要あり |
| 3〜2 | 中 | ・速やかに直ちにリスク低減措置を講ずる必要あり ・措置を講ずるまで作業停止が望ましい ・優先的に経営資源を投入することが望ましい |
| 1 | 低 | ・必要に応じてリスク低減措置を実施 |
③ 見積もり対象となるリスクについて、
- 災害が発生する可能性の度合い(頻度)について、極めて高い、比較的高い、可能性あり、ほとんどないのいずれかを選びます。
- もし災害が発生したときの負傷又は疾病がどのくらいの程度になりそうか(重篤度)について、致命的、重大、中程度、軽度のいずれかを選びます。
④ ③の評価結果から表1の中の数字を選びます。
<例>「可能性の度合」が「比較的高い」で、「負傷又は疾病の重篤度」が「重大」の場合は「4」となります。
⑤ 表2から対策の優先度や措置を講ずるまでのことについて選び、措置を講じます。
<例>「4」の場合は、次の措置を講じます。
・直ちにリスク低減措置を講ずる必要あり
・措置を講ずるまで作業停止
・十分な経営資源を投入する必要あり
数値化による加算法
「負傷又は疾病の重篤度」と「発生可能性の度合」を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを数値演算(かけ算、足し算等)してリスクを見積もる方法です。
<見積もり例>
① あらかじめ、負傷又は疾病の重篤度と発生可能性の度合いを数値化しておき、次の表1と表2を作成しておきます。
(表1)負傷又は疾病の重篤度
| 致命的 | 重大 | 中程度 | 軽度 |
| 30点 | 20点 | 7点 | 2点 |
(表2)発生可能性の度合い
| 極めて高い | 比較的高い | 可能性あり | ほとんどない |
| 20点 | 15点 | 7点 | 2点 |
② 次のような表に、あらかじめ対策を講ずべき優先度とその対策を講ずるまでのことを決めておきます。
(表3)リスクと優先度
| リスク | 優先度 | |
| 30点以上 | 高 | ・直ちにリスク低減措置を講ずる必要あり ・措置を講ずるまで作業停止 ・十分な経営資源を投入する必要あり |
| 10〜29点 | 中 | ・速やかに直ちにリスク低減措置を講ずる必要あり ・措置を講ずるまで作業停止が望ましい ・優先的に経営資源を投入することが望ましい |
| 10点未満 | 低 | ・必要に応じてリスク低減措置を実施 |
③ 見積もり対象となるリスクについて、
- 災害が発生する可能性の度合い(頻度)について、極めて高い、比較的高い、可能性あり、ほとんどないのいずれかを選びます。
- もし災害が発生したときの負傷又は疾病がどのくらいの程度になりそうか(重篤度)について、致命的、重大、中程度、軽度のいずれかを選びます。
④ ③の評価結果から表1と表2の中の点数を選びます。
<例>「可能性の度合」が「比較的高い」の場合は15点、「負傷又は疾病の重篤度」が「重大」の場合は20点となります。
⑤ 次の式でリスクの計算をします。
「リスク」 = 「重篤度」の点数 + 「発生可能性の度合い」の点数
<例>リスク=20点+15点=35点
⑥ 表3から対策の優先度や措置を講ずるまでのことについて選び、措置を講じます。
<例>「35点」の場合は、次の措置を講じます。
・直ちにリスク低減措置を講ずる必要あり
・措置を講ずるまで作業停止
・十分な経営資源を投入する必要あり
留意事項
「頻度」と「可能性」を間違えないようにしましょう。ここでいう「頻度」とは、作業中の危険性又は有害性と作業者が接触し、リスクが発生する頻度のことで、作業回数ではありません。
<例>
台車を使った荷物の運搬作業の作業を考えてみます。この場合、リスクが発生する頻度は、荷物が崩れ落ちる頻度です.台車と荷物をひもで縛って落ちにくくする対策をとれば、「リスクが発生する頻度」は低下します。
ところが、運搬作業を「リスクが発生する頻度」と考えてしまうと、落下を防ぐための対策を実施しても運搬作業の回数は毎日実施されるとすると、「リスクが発生する頻度」は低下しないことになります。これではリスク低減措置の効果は現れにくくなります。
また、「リスクが発生したときに負傷又は疾病になる可能性」は、この台車を使った荷物の運搬作業を考えた場合、荷物が崩れ落ちたときに足に落ちてケガをする可能性となります。この例では、荷に注目していれば危険が把握できて、危険から回避できると想定されますので、ここでは「可能性がある」と判断します。

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